縁
あんた、こんな所におったとぉ?心配したんよぉ。
そう声を掛けたところで目覚めました。
夢の中とは言え、コナンに会えたことが嬉しくて気分良く起床。
午前中、音大受験生のハードなレッスンをこなし、遅めの昼食が終わって一息ついていると、動物愛護センターから、O地区で、「自宅の庭に首輪を付けたレトリバーが迷い込んで来た」、
と電話がありましたが探しに行きますか?との電話がありました。
O地区には親戚がいるので、たまに行きますが、自宅からは車で10分程の場所。
若い犬ならともかく、コナンのあの足で行けるような距離ではありません。
そんな元気があるならば、きっと家に戻って来るんじゃないか?
と思いましたが、万が一の奇跡を信じることにして、探しに行く、と伝えました。
近年の個人情報保護法に基づき、先方の名前や住所は教えてはくれません。
こちらの連絡先を先方に伝えていただくようお願いし、電話を待ちました。
その方はSさんと言って、親戚と同じ名前でしたので、親戚かと思いましたが、O地区にはS姓の家が何軒もありますので、別のSさんでした。
電話を待つのももどかしく、こちらから該当する家に向かって車を走らせていると、Sさんから電話がかかってきました。
レトリバーの件ですが、今、うちの裏山にいますよ。
と、嬉しいお言葉。
今、すぐ側まで来ていますので、すぐに行きます。
と答え、はやる気持ちを抑えながら大急ぎでSさん宅に向かいます。
すると、家からSさんらしき方とレトリバーが出てきました。
違う
すぐにコナンじゃないとわかりました。
犬が苦手と仰るSさんは、ラブラドールだかゴールデンだか区別がつかなかったようです。
まだ若い、元気なゴールデン・レトリバーでした。
首輪に鑑札がついていたので、私が番号を控え、Sさんが愛護センターに問い合わせた結果飼い主が見つかりました。
やっぱりコナンじゃなかった。そりゃそうよね、この暑さの中2週間も生きているわけ無いよね。と自分を納得させました。
飼い主さんが見つかって良かった。
捨て犬じゃなくて良かった。
そのゴールデンちゃんは人懐っこくて、私にまとわり付くので「ヨシヨシ、もうじきお父さんやお母さんが来るってよ。よかったね。もう、遠くに行ったらいけんよ。」と話しかけました。
久しぶりに触った犬の感触が、たまらなく懐かしくなり、号泣。
Sさんももらい泣きなさっていました。
コナンじゃなかったけれど、がっかりはしたけれど、ほんの少しの時間、期待し希望を持たせてもらったことにお礼を言って、車に乗り込みました。
エンジンをかけ、発信する前に窓を開け、再度お礼を言い、道路と田んぼを挟んでSさん宅正面に見える家を指差し
あの家は親戚の家なんですよ。同じSって言うんですよ。
と話すと、
えっ!?あの正面の家ですか?あそこは主人の実家ですよ。
と仰るではありませんか?
えっ!?M子おばちゃんの家ですけど。
はい、そうです。そのM子が主人の母です。
M子おばちゃんは、私の母の従妹で、みかん農家を経営しています。
過去に、福岡県のみかん品評会で1等賞を取ったこともあり、季節になると美味しいみかんを自宅まで持って来てくれます。
とっても美味しいみかんなんですよ。
たけのこやスイカなどもくれます。
お世話してくれた女性が、そのM子おばちゃんの息子の奥さんだったなんて、何というご縁なんでしょう。
とてもテキパキとお話してくださり、お忙しい時間にもかかわらず、犬のことを真剣に心配してくださる、優しい方でした。
世の中広いようで狭いものですね。
がっかりしながらも心がほっこりした一日でした。